クレジットカードをタッチするだけで電車やバスなどに乗れる「タッチ決済乗車」が日本でも徐々に普及してきています。
海外からの旅行者にとっては、タッチ決済乗車により移動の利便性が向上しますが、日本(特に首都圏)では交通系ICカードが広く利用されているため、そのメリットを実感しにくいかもしれません。しかし、期間限定のキャンペーンでお得になったりするので、一度体験してみる価値はあります。
この記事では、タッチ決済乗車の概要、利用方法、メリット・デメリット、そして実際に試す際のポイントを詳しく解説します。
タッチ決済乗車の基本
タッチ決済乗車とは、タッチ決済対応のカード(クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード)や、同カードが設定されたスマートフォン等を改札機にかざすだけで、公共交通機関を利用できるサービスです。

最近では、お店での支払いにタッチ決済を利用する場面が増えていますが、このタッチ決済と同じ仕組みです。
参考記事:三井住友カード スマホのタッチ決済で7%還元!やり方を解説
海外では約10年前から導入されていましたが、日本では2023年頃から実証実験が始まり、首都圏では2024年に導入がスタートしました。
改札での使用方法は、交通系ICカード(Suicaなど)と同様で、改札機にかざすだけです。クレジットカードで決済されるため、交通系ICカードのように事前にチャージする必要はありません。
▼近鉄でタッチ決済乗車スタートのニュース
対応路線
2025年1月時点の主な対応路線は以下の通りです:
- 関東:東急電鉄、京王電鉄、京急電鉄、江ノ島電鉄、西武鉄道など
- 関西:大阪メトロ、近畿日本鉄道、阪急電鉄、阪神電車、南海電鉄など
- 九州:福岡市地下鉄、西日本鉄道、JR九州、熊本市交通局など
鉄道以外にも、バス、フェリー、ロープウェイなどでも導入されています。
タッチ決済の導入は、交通系ICカードの導入に比べて低コストであるため、地方都市での導入が積極的に進められています。
最新情報は、VISA公式サイト内の「タッチ決済でご乗車可能な日本の公共交通機関」、JCB公式サイト内の「使える公共交通機関」などで確認できます。
利用可能なカードと決済ブランド
タッチ決済乗車は、「クレジットカード」、「デビットカード」、「プリペイドカード」で利用可能です。カードにリップルマーク(4本線の波上マーク)がある場合、タッチ決済が可能となります。

以下の国際ブランドがタッチ決済乗車に対応しています:
- Visa
- JCB
- American Express
- Diners Club
- Discover
- 銀聯(UnionPay)
※Mastercardは、福岡市地下鉄など一部の交通機関でのみ利用可能です。多くの交通機関では、2025年以降に対応予定です。
タッチ決済専用端末の近くには、対応している国際ブランドのマークが表示されています。(※下記写真は東急線)。

タッチ決済乗車の利用方法
鉄道でのタッチ決済乗車の方法です。
1.クレジットカードまたはスマートフォンを準備
※クレジットカードの事前登録は不要です
※プリペイドカード、デビットカードも利用可能
▼現物カードの場合
カードにリップルマーク(4本線の波上マーク)があればクレジットカード(デビットカード、プリペイドカード)でタッチ決済が可能です。

▼スマートフォンなどの場合
スマートフォンやスマートウォッチなど、カード以外のデバイスでも使えます(NFC対応端末)。
下記はiPhone、Androidスマホのウォレットに登録したカードです。ウォレットのカード上に国際ブランド(VISAやJCBなど)が表示されていれば、タッチ決済が可能です。


上記画像ではVISAマークが表示されているので、VISAのタッチ決済が可能です。
スマホ(Apple Pay /Google Pay)へのカードの登録方法は下記を参考にしてください
関連記事:Apple Payの始め方・使い方を徹底解説
関連記事:Google Payの始め方・使い方を徹底解説
※スマートフォンのロック状態でタッチ決済乗車をするための設定については、後述します。
2.改札機にかざす
タッチ決済に対応している改札機(交通系ICカードとは別の専用端末)を確認し、クレジットカードまたはスマートフォンをかざします。読み取り音が鳴ったら、そのまま通過できます。

▼タッチ決済乗車の動画①(物理カード/大阪メトロ)
▼タッチ決済乗車の動画②(iPhone/東急田園都市線)
▼タッチ決済乗車の動画③(Android/都営地下鉄)
物理カードでタッチする場合に比べ、スマホやウェアラブルデバイスでタッチするほうが若干処理スピードが速いようです。
下記はモバイルSuicaで改札を通過している動画です。比べるとモバイルSuicaのほうが速いですね。
運賃の精算、引き落としはいつ?
タッチ決済乗車の料金は、乗車日の翌日に精算されます。1日分の利用金額が合算され、1つの明細として確定します。
引き落とし日は、デビットおよびプリペイドカードの場合は原則翌日、クレジットカードの場合は翌月または翌々月(カード会社の規定による)です。
デビットカード、プリペイドカードで乗車時に残高が不足している場合は?
乗車日の翌日に精算されるので、乗車時のカード有効性チェックを通過すれば、残高が不足していても改札を通過できるようです。実際に、Kyash(プリペイドカード)では以下のように記載されています。
Visaタッチを利用した公共交通機関のご利用では、運賃について乗車の翌日以降にKyash残高から減算されます。乗車した当日中にご利用金額以上のKyash残高を入金ください。
Visaタッチ決済を使用した公共交通機関のご利用について
残高不足により引き落としができないと、乗車拒否リストに登録されてしまい、その場合は駅の係員に解除を依頼する必要があるそうです。
残高不足の場合、「支払失敗」となり、アプリに通知が届きます。また、取引履歴にてステータスが「支払失敗」となっている場合、残高不足により前日の公共交通機関の乗車料金が精算されておりません。
上記の場合、乗車拒否リスト(DL)に入ってしまい、公共交通機関への乗車ができなくなってしまいます。この乗車拒否リストを解除するためには、駅係員窓口にて解除手続きが必要となります。

残高不足になると厄介なことになりますね。デビットカードやプリペイドカードを利用する際は、残高不足が起きないよう十分に注意しましょう。
また、タッチ決済で乗車する場合、多くの路線では切符と同じく10円単位の普通運賃が適用されます(※)。一方、Suicaなどの交通系ICカードで乗車すると、1円単位のIC運賃が適用され、切符より安くなることが一般的です。
※横浜市営地下鉄など、一部ではタッチ決済でも1円単位の運賃が適用されます。
例えば、国分寺~本川越間の運賃は、タッチ決済では390円ですが、Suicaでは387円でした。


利用履歴の確認方法
利用履歴は、QUADRAC社が提供するQ-moveサイトで確認できます(最長で過去365日分)。利用にはQ-moveサイトへの登録(無料)が必要です。登録に必要な情報は、カード番号、メールアドレス、パスワード、氏名、生年月日です。
複数枚のカードを登録することもできます。
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詳細な乗車履歴や運賃はカード会社の明細では確認できないため、Q-moveサイトに登録しておくと便利です!
カード会社の利用明細には、1日の乗車利用分が合算された金額が表示されます。

Q-moveサイトでは乗車区間や区間運賃などの詳細な乗車履歴を確認できます。

スマホのスリープ/ロック状態でタッチ決済乗車をするための設定
設定をしておけば、認証不要でスマホをタッチするだけで素早く改札を通過できます。
※iPhoneはエクスプレス設定しておけばスリープ状態やロック状態で利用可能
※Androidは認証設定しておけばロック状態で利用可能(スリープ状態では不可)?
ただし、すべての公共交通機関が対応しているわけではありません。改札機がスマホ側の認証情報を要求する場合などはロック解除が必要です。
エクスプレス設定に対応していることが確認できたのは、
東急線、江ノ電、西武鉄道、都営地下鉄、福岡市地下鉄、など
です。
多くの鉄道ではエクスプレスカードに対応していますが、バスではエクスプレスカードに対応していない場合が比較的多いようです。
iPhone
交通機関で利用する交通系ICや支払い用カード(クレジットカード)をエクスプレスカードに設定しておくと、デバイスのロック解除や生体認証をしなくても、かざすだけで使えます。スリープ状態(画面が暗い状態)でも利用可能なので、モバイルSuicaと同じように使えます。
タッチ決済乗車で利用するクレジットカードは『支払い用カード』に設定します。
▼設定方法
1.設定の「ウォレットとApple Pay」→「エクスプレスカード」をタップします。
2.「支払い用カード」に設定したいカードを選択します。カードの右側に青いチェックマークが表示されます。

ウォレットアプリからも設定可能です。設定方法は、下記のJCB公式サイトで確認できます。
>>公共交通機関でのお支払い-設定方法(JCB公式サイト)
Walletアプリでカードが表示されていない状態(ロック画面やスリープ状態など)でタッチ決済をした場合、支払い用カードに設定されているカードが自動的に使用されます。
支払い用カードのエクスプレスカード機能は、公共交通機関での運賃支払いのみで機能します。店舗での支払い時には、エクスプレスカードとしては機能せず、認証が必要となります。
※エクスプレスカードに設定できるのは、交通系ICカード1枚と支払い用カード1枚のみです
※エクスプレスカード設定を行っても、機器によってはTouch ID/Face IDが必要となる場合があります
Android
Google Pay公式によると、本人確認設定をオフにすることで、画面ロック状態でもタッチ決済による乗車が可能になるとされています。実際に画面ロックのまま乗車できたという声もありますが、私が試した際にはロック状態では利用できませんでした。
※モバイルSuicaのように、スリープ状態(画面が暗い状態)ではタッチ決済は利用できません
▼本人確認オフの設定方法
1.Google ウォレットアプリの右上のプロフィール画像をタップ
2.「ウォレットの設定」→「本人確認の設定」→「交通機関の支払い」をタップ
3.[確認が必要です]をオフにします(下記画像のように)。デフォルト設定ではチェックが入ったON状態になっています。

「確認が必要です」をオフにすると、鉄道やバスでのタッチ決済時に画面ロックを解除せずに利用できます。ただし、交通機関以外の店舗などで支払う際には、ロック解除が必要です。
読者の方からの情報によると、確認設定をオフにしておけば、事前の本人確認なしで、ロック画面でも改札を通過できたそうです。ただし、スリープ状態では利用できなかったとのことです。
私もロック画面の状態で改札にタッチしてみましたが(タッチ前に本人確認をしていない)、パスコードを要求されて改札を通過できませんでした。
👇パスコード入力して改札通過したときの様子 pic.twitter.com/JT6lWnaArZ
— スマっ子|お得キャッシュレス (@SmakkoCashless) March 26, 2025
スマホの機種などの影響があるのかもしれません。
Androidではタッチ決済のトラブルが多いので、本人確認&ロックを解除して使うのが確実です(特に初めての場所で使う場合には)。
★AndroidスマホでNFCを利用する際の注意点
スマホの機種によっては、初期設定でロックを解除しないとNFCが使えないようになっています。この場合、タッチ決済乗車だけでなく、交通系ICカードもロック状態では使えません。
以下の手順でこの設定を変更できます。
1.設定アプリを開く
2.[接続済みのデバイス]→ [接続の設定] → [NFC]
3.[NFCの使用にロック解除を要求]をオフにする
タッチ決済乗車のメリット・デメリット
メリット
- チャージ不要(=残高不足の心配なし)
- 海外でも利用可能
- クレジットカードのポイントが貯まる
- キャッシュバックなどのキャンペーンが開催される
その他にも、海外旅行の際には、海外旅行保険が利用付帯のクレジットカードで空港までタッチ決済乗車をすることで、保険適用条件を満たすことができるというメリットもあります。
デメリット
- 全ての路線や駅で利用できるわけではない
- 鉄道では使える改札が少ない(対応レーンが限定される)
- 処理速度が交通系ICカードよりもやや遅い
- 乗継割引が適用されない場合がある
- 小児運賃や障害者割引運賃には対応していない
現状、首都圏では対応している駅が少ないため(例えば、乗車駅はタッチ決済対応でも降車駅が非対応など)、使いにくいのが実情です…。キャンペーンがない限り、積極的に利用する状況にはならないと思います。
タッチ決済乗車をしてみた感想
私はモバイルSuica愛用者なので、タッチ決済乗車はこれまでスルーしていました(笑)。しかし、実際にタッチ決済乗車を試してみると、スピードは思った以上に速く感じました。Suicaのスピードにはかないませんが、タッチ決済でも全くストレスなく通過できるレベルです。
今更ながら、改札でクレジットカード(VISA)のタッチ決済やってみました!
— スマっ子|お得キャッシュレス (@SmakkoCashless) December 18, 2024
ストレスなく使えますね。 pic.twitter.com/xrKnMiCzZY
首都圏の通勤ラッシュでは難しいかもしれませんが、それ以外では普通に使えると思います。特に外国人観光客や普段交通系ICカードを利用しない方にとっては、タッチ決済乗車は非常に便利です。
iPhoneで使う場合はモバイルSuicaなどの交通系ICカードと同様に、スマホがスリープ状態でも使用可能なため、当初想像していたよりも使い勝手がよいと感じました。ただし、スマホでのタッチ決済は、慣れていない人がエラーを起こすことがあるので、スマホのタッチ決済に不安がある方は、現物のカード使うのが無難かもしれません。
私自身は今後も主に交通系ICカードを利用すると思いますが、交通系ICカードが使えない場所に行く際や、タッチ決済乗車のキャンペーンが実施されている場合には、タッチ決済乗車を活用したいと考えています。
タッチ決済乗車のキャンペーン
▼開催中のキャンペーン
三井住友カード スマホのタッチ決済乗車で7%還元
三井住友カードでは5月31日まで、対象の鉄道運賃をVISAのタッチ決済で支払うと還元率がアップするキャンペーンを開催しています。
対象となるのは、三井住友カードのVISAブランドでVポイントが貯まるカードの多くです。ただし、ビジネスカードは対象外となっています。
期間 | 2025年2月25日(火)~5月31日(土) |
内容 | 対象の事業者にて対象カードを設定したスマホのVisaのタッチ決済をすると、Vポイント最大7%還元(上限1,000ポイント) ※カード現物のVisaタッチ決済は1.5%還元(通常還元率0.5%含む) ※Mastercardは対象外 |
対象のカード | 三井住友カード VISA(NL)、Oliveフレキシブルペイなど 詳しくはキャンペーンページでご確認ください |
エントリー | 不要 |
キャンペーンページ | 対象の事業者でスマホのVisaのタッチ決済を使うと、Vポイント最大7%還元!(上限1,000ポイント) |
対象事業者は、例えば、関東だと下記となります。
- 江ノ島電鉄
- 京王電鉄
- 京浜急行電鉄
- 西武鉄道
- 高尾登山電鉄
- 東急電鉄
- 東京都交通局
- 横浜高速鉄道
- 横浜市営地下鉄
詳しくはキャンペーンページでご確認ください。
現物カードのタッチ決済は1.5%還元ですが、スマホ(Apple Pay・Google Pay)のタッチ決済では7%還元となるので、利用するならスマホのタッチ決済がお得です!
三井住友カードのタッチ決済については下記記事で詳しく解説しています。
参考記事:三井住友カード スマホのタッチ決済で7%還元!やり方を徹底解説
▼終了したキャンペーン
キャンペーンは終了しました

キャンペーン期間 | 2025年1月16日(木) ~ 3月16日(日) |
特典 | 期間中のご利用合計金額の30%をキャッシュバック(上限500円相当) ※対象となるカードを複数お持ちの場合は、カードごとにキャンペーンが適用 |
特典進呈時期 | 2025年6月以降順次キャッシュバック |
キャンペーン対象 | 対象のカード発行会社一覧 |
対象のカード | JCBクレジットカードおよびJCBデビット ※プリペイドカードは対象外 ※JCBプリペイドおよび一部のカードは、本キャンペーンの対象となりません。 |
対象の支払い方法 | JCBのタッチ決済でのお支払い |
対象の公共交通機関 | 対象の公共交通機関はこちら |
エントリー | 不要 |
キャンペーンページ | JCBのタッチ決済で公共交通機関に乗ろう!30%キャッシュバックキャンペーン |
エントリーは不要です。
還元上限は500円(1,667円までの利用)ですが、これはカードごとに適用されるため、複数枚のカードを使って利用することができます。タッチ決済乗車ができる区間をよく利用する人にとってはお得なキャンペーンですね。
私が持っているカードでは、楽天カード、ファミマTカード、アプラスカード、楽天銀行デビット、みんなの銀行デビットなどが対象です。
【追記】西武線に乗る機会があったのでJCBカードでタッチ決済乗車してみました。西武線はタッチ決済に対応している改札がすべての駅に設置されているわけではないので、乗車駅と降車駅で設置されているかを事前に確認しておく必要があります。
乗車履歴👇 pic.twitter.com/Zhwd3OiyEZ
— スマっ子|お得キャッシュレス (@SmakkoCashless) February 9, 2025
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